太平洋戦争で夫を亡くした沖井さくら(秋吉久美子)は、苦労して息子を育て、やがて従弟の中田健造(役所広司)と再婚する。だが健造には結婚前から交際を続けていた愛人・洋子(武田久美子)がいた。従弟だったら子供を作らずに愛情ある家庭が築けると考えたさくらと、愛人関係を続けたまま、さくらとも愛のある結婚生活ができると考えた健造は、それぞれの心理を明らかにしないまま暮らし始めた。新婚早々さくらは結核で倒れるが、それをきっかけに洋子が二人の新婚家庭に闖入してくる。洋子はそのまま夫婦の間に割り込み、奇妙な共同生活が始まった。耐え切れなくなったさくらは、健造の弟で言語障害をもつ勇造(倉崎青児)と、洋子の結婚を健造に持ちかけたが、健造は彼らの結婚後も洋子との関係を続けた。しかし、やがて洋子に勇造の子供が生まれると、ようやく二人の愛人関係は終わりを迎えた。だが、健造は相変わらず妻に指一本触れようとしないまま、17年の歳月が過ぎていく…。そんな時、健造の心の拠りどころだった母・よしの(河内桃子)が死ぬ。自暴自棄になった健造はさくらへの愛に目覚めながらも、自らの死を選んだ。そして昭和が終わり、さくらの母も亡くなった今、さくらは改めて夫・健造のことや自分の生きてきた人生を振り返るのだった。「昭和」という時代に翻弄されながら、自分の愛の姿を追い求め、各々の信ずるまま生きようとする男と女。夫婦の姿を通して、女であること、男であるがゆえの、哀しいまでの心のすれ違いを鋭く描く佳品だ。